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「漁師」と呼ばれる牛飼い、トコトン”好き”と生きていく/京村耕平さん

島根・津和野

まちづくり, コミュニティ経済

「夏は主に川に出て鮎を網でとってますね。朝5時から解放される区間を2時くらいから仲間と場所取りしたりします。あとカニやうなぎがどこにいるかも川見れば大体分かるし。船釣りで海に出るときは4時には港にいないとね。」

京村耕平さんは、笑いながらこう話す。京村さんは津和野町左鐙地区にある「京村牧場」の長男。畜産業を営む同牧場の跡取りとして期待される彼だが、周りからは「あいつは本当は牛飼いじゃない。漁師だ。」と言われる。『それほど本気で釣りに向き合うから』という理由なのだが、彼の場合は釣りに限らない。トコトン”好き”と向き合っているのである。

“好き”だから工夫し、トコトン没頭する

幼少期の家族写真。

(幼少期の家族写真。)

京村さんは1990年に4人兄弟の長男として生まれ、現在は実家の京村牧場で「牛飼い」として働いている。地域の人気者の彼だが、ちょっとした変わり者としても知られている。

「小学生の頃、お小遣いがもっと欲しかったんです。でも言ってももらえなかったので、山に入って柿を取ってきて、自分で干して袋詰めして、それをおじいちゃんに道の駅で販売してもらいました。そしたらそっちのがお小遣いより全然もらえたんです(笑)そこからまあ、色々やりましたよね(笑)」

「高校生の頃は友達と自転車で3時間かけてダムに釣りに行ったりしてました。大学生の頃はスキーのシーズンチケットを買って28日間連続で滑りに行ったこともありますね。」

彼のエピソードは「そこまでやるのか!」と驚かせるものばかり。京村さん曰く、理由は「田舎でやることがなかったから」とのことだが、話を聞いていくと様々な工夫や考えを持って楽しみを作っていることが分かる。例えば冒頭の釣りの話にしても、

「鮎の場合、 漁をしてる最中で大体どれくらい獲れるかが見えてくるので、何軒か料理屋に電話をして鮎がいらないかを聞きます。余ったら加工をしてくれる会社に持って行って売りますね。もちろん漁業免許は持っています。僕は釣りが好きですが、釣るのも楽しいし、その後にお金にするのも楽しいんです。もちろん自分で料理して食べるのも最高ですね!」

と話す。一般的にはレジャーとしての”釣り”とビジネスとしての”漁業”を分けたくなるが、京村さんの感覚はそうではなく、「釣るプロセスから販売や調理まで」が楽しみなのだそう。

牛飼いなのに、牛アレルギー。

(牛のセリ市。中央が京村さん)

(牛のセリ市。中央が京村さん)

本業の牛飼いでも、京村さんの”好き”を大切にする姿勢が見て取れる。実は京村さん、牛アレルギーなのである。

「牛の毛を吸ったら涙と鼻水だらけになります。もっとヤバイことになるリスクもあるみたいですけど、吸わなければ問題ないです(笑)」

京村牧場は、京村さんの父で現在代表を務める真光さんが、先代の残した農場と1頭の牛から作り上げた牧場で、現在は200頭ほどの牛を飼育している。母牛に子牛を産ませ、ある程度子牛を育ててセリに出すという「繁殖農家」としての仕事が主であるが、その中でも母牛・子牛の体調管理はもちろん、出産スケジュールや人工授精など様々な仕事で責任を担うなど、跡取りでもある京村さんの役割は大きい。

「牛飼いになりたいと思ったのは、幼稚園を卒業する時からみたいです。町の広報に顔写真と将来の夢が載せられるんですが、その時にはもう『父さんみたいな牛飼いになる』と書いてました。やっぱり父さんがカッコ良かったからですね。」

京村さんは中学校までは地元の学校に通うが、高校・大学は寮生活をし、卒業後は大分の牧場で3年間の研修を積んできた。

「規模が何十倍もあるような大きな牧場だったけど、そこでいろんなことを学べた。実家をどういう牧場にしていきたいかについて、色んな選択肢も考えられたし。やっぱり好きだから一生懸命になれる。それがたまたま牛アレルギーだっただけで、それはどうでも良いことです(笑)」

“好き”をチカラに。そんな人物を地域は必要としている。

夏は釣り・冬はスキーに勤しむ京村さん

(夏は釣り・冬はスキーに勤しむ京村さん)

京村さんを見て思うことは、何をしている時でも『いつも楽しそう』だということ。だるそうだったりつまらなそうというエネルギーをほとんど感じさせないことは、京村さんの魅力でもある。この”好きなこと”にトコトンまで向き合うという姿勢からは、どんなことでも前向きに乗り越えて行こうとするエネルギーが生まれていると感じる。

「僕は地元の左鐙が好き。不便だとか言われるけど、むしろなんでもありますよ!映画とか見る時は福岡とか広島に行けばいいし、欲しいものはネットで買えるし。まあ結局は好きかどうかだけですよね。
でも、好きなことを続けていくためにもある程度のお金が必要になります。だから、”好き”をお金にするための仕組みをしっかりと作っていきます。基礎をしっかりと作って、『京村のやり方はそういうもんだ』と思ってもらえるようになったら最高ですよね。」

仕事選びにしても、生き方選びにしても、自分が好きなことを中心にし、そのこととトコトン向き合っていく。シンプルで当たり前なことだけど、これからの時代を生きていく若い世代にとっては特に大切なことではないかと思います。また、地域ではこんな人物が必要とされているんじゃないかとも思います。

僕も京村さんに負けじと、自分の”好き”と向き合っていきたいです。

(文:林 賢司)