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ソーラーシェアリング-農地に降り注ぐ太陽を共有/福島県相馬郡飯舘村

福島・相馬

まちづくり, ソーラーシェアリング, ローカルエネルギー, 再生可能エネルギー, 地域協働, 災害復興

「農地の上空に太陽光パネルなんて影になって収穫量が減るでしょう?」
「いえいえ収穫量が増えることさえありますよ。」

  ソーラーシェアリングという言葉をご存知だろうか?カーシェアリング、ルームシェアリング、ワークシェアリング・・・Wikipediaにはまだ載っていないがまもなく掲載されるだろうほど、加速度的に普及が広がっている。営農型発電とも呼ばれるこの取り組みは、日本の電気エネルギー事情を変え、農地活用のあり方(農地法)を変えるきっかけになるかもしれない。
  ソーラーシェアリングを簡単に説明すると、その名の通り太陽の光を分け合うのだが、光を分け合うのは、他のシェアリングと違って人ではなく、しかも太陽光パネルと農作物という異なった者同士だ。上空2〜3mに藤棚のようにあるいはカーポートのように、あるいはパラソルのようにパネルが配置されるが、その下では農作物を普通に栽培する。

ソーラーシェアリングのタイプ1

ソーラーシェアリングのタイプ1


ソーラーシェアリングのタイプ2

ソーラーシェアリングのタイプ2

  当然、光を遮るのだから下の農作物に影響が出ると思われるのだが、実際は違う。植物全般に言えることだが、「一定以上の光は必要ない」のである。理科の教科書に出てくる「光飽和点」という考え方があり、光合成には光が必要だが、強すぎる光は必要ないという事実である。また、植物によって光の好み具合はことなり、弱い光のほうがよく育つ植物もある。
  だから上手く光をシェアして、発電にもメリットがあり、農作物にも影響がないので一石二鳥の取り組みだというわけである。さらに、今では農作物に影響がないどころか、かえって収穫量が上がるというデータも出てきている。いままでは農業関係者でも「日陰が好きなミョウガのような植物にはよいが、太陽が好きなトウモロコシ等では収穫量は下がるだろう」と見られていた。
  私もある方の講演を聞いた後、「それは誇大に言いすぎでしょう」と笑ったものだが、その後実証データがあることを伺い、自分の不明を恥じた。どうやら光飽和点は照度だけを考慮した結果で、外気温や植物の温度を加味すると光合成速度は変わってくるようだ。暑い夏には食欲が減るのは人間だけではないということだろうか。これは大変興味深い事実で、これからもっと沢山の実績が積み上がっていくことになると思う。

光飽和点の簡易説明図

光飽和点の簡易説明図

  このソーラーシェアリングを飯舘電力が採用し、今年度3月末までに12基が飯舘村内に建設される。ここに至るまでには長い道のりがあったが、それには電力系統接続の問題と農地法の壁の2つがあった。1つ目の電力系統接続の問題は次回以降に譲るとして、今回は農地法の壁に触れたい。
  全国的に見て、広大な田園地帯の真ん中にいきなり住宅地が出てくることはないし、工場やショッピングモールがぽつんと出てくることもない。農地法によって、開発から守られているからだ。いくら自己所有の土地だからといって、農地以外の目的に利用することは原則禁止である。もし農地を農地以外の目的に利用しようとするためには都道府県知事(一部市町村に許可権限が移譲されている)の許可を貰わなければならない(これを転用許可申請という)。つまり農地法には優良農地確保のための「開発規制」の側面がある。
  しかし、飯舘村の農地は他の地域と明らかに状況が異なる。農業者は、農地を使いたくても当面使えない。なぜなら、1)農地除染によって相当期間農業に利用できなかった。2)さらに栽培を始めるまでは、モニタリング栽培が終了まで(試験栽培されたものが放射線量検査を経て基準値を超えないことが確認されるまで)待たないと作物の栽培許可が出ない。3)一番問題なのは今後の見通しだ。再び放射線数値が基準値を超えたら、地域まるごと作付禁止になってしまう。損害賠償は請求を起こしてみなければ結果はわからず、どのくらい応じてもらえるのかはこれまたわからない。

飯舘村における農業再開プロセス

飯舘村における農業再開プロセス


いよいよ来年4月には帰村して農業を再開。そのため家を再建中

いよいよ来年4月には帰村して農業を再開。そのため家を再建中

  ただでさえ厳しい農業情勢に対し、全国各地でしのぎを削って差別化を図っているのに、飯舘村は何で戦っていくのか。「検査をして安全を確認しています」と言っても当たり前になってきた。「食べて応援」していただくのはありがたいが、初期に限定されるのは他地域で証明されている。前回記事で書いた社長小林の「不安」を、あえて表現するならこういうところかもしれない。先日、発電所地権者さんと土地賃貸借契約を結びながら話した。
「飯館村を離れて暮らす期間が長くなると、どうしたって意欲が出ない。農地に足が向かない。」
  荒れてしまった農地に対し、長期間はなれていた心を取り戻すのは容易ではない。税金を投入し続けられるわけでもないことは明らかだ。この状況下での農地利用<開発規制も含めた>を考えるのは並大抵のことではない。官民挙げて知恵を絞らねばならないところだ。
  先に「優良農地の確保のための開発規制」と書いた。飯舘村において、優良農地を守るとはどういうことか。私たちは一部の農地に太陽光発電所を設置し、まずは通うきっかけにしよう。自分たちの発電所を持ち、自分たちで管理しよう。補助金で村に通うのではなく、自分たちで稼いだお金で優良農地を維持しよう。そう考えた。
  そう考えて、機械利用に邪魔にならない農地を選んで転用許可申請を提出したが、開発規制の制約を受けてしまった。つまり不許可であった。社長は農業者であり、農業のために太陽光発電所を設置する。と言っても通じなかった。「飯舘電力」という名前からか、農地利用を阻害する側に見られていたのかもしれない。あるいは許可を認めてしまったら収拾がつかなくなると恐れられたのかもしれない。
  しかし、諦めきれない私たちはソーラーシェアリングという方法を勉強し、この方法で申請すると今度は許可がおりた。同じ地域で前例があったのも幸いした。これからが更に大変だが、間違いなく大きな一歩を踏み出した。すると今度は、本気になって農業を再興させる意志が通じたのか、当初の申請方法(下部で営農しない)でも許可がおりるようになった。ようやく太陽光発電と農業という軸が立つことになった。
  飯舘村にそそぐ太陽に背を向けず、大いに利用したい。農地に降り注ぐ太陽を共有<シェアリング>したい。その果実である農産物をお届けしたい。その農産物でお客様の喜ぶ顔が、農地に足を運ぶ力になる。

(文:飯舘電力株式会社 福島事務所長 近藤恵)