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新しい人の流れをつくる ゆすはらキャンパス/高知県梼原町

高知・奥四万十

エコミュージアム, 交流人口拡大, 地域協働

これまでの記事では、梼原町の豊かな自然と温かい人々、そしてそのフュージョンによって生まれたちょっと面白い文化や伝統、地の理を活かしたユニークな町の施策について取り上げてきました。
今回は、そんな幾多の魅力を持つこの町全体を1つのキャンパス=学びの場に見立てた「ゆすはらキャンパス」の取り組みついてご紹介したいと思います。

過去の記事を読んでくださった方にはくどいようですが、梼原町は高知県の西部に位置する山間部の町。高知市中心部からは車で90分。バスだともっと時間がかかりますし、電車は通っていません。「そんな場所に大学のキャンパスがあるのか?」と思った方もいらっしゃることでしょう。
実際、華のキャンパスライフのようなイメージとは少し違うかもしれません。

地域住民を先生に迎えて

地域住民を先生に迎えて

梼原町では、町外の小中学校・高校・大学との連携に力を入れています。
例えばインターンシップの受け入れや、町の県立高校と私立大学との指定校推薦の協定、国際交流による特産品づくり、若者定住促進の調査委託などその形態は実に様々。
学校側と町との持ちつ持たれつの関係性を活かしながら、町という存在そのものが、複数の教育機関が利用する共同キャンパスのような役目を果たしているのです。
また、町では交流人口の拡大を目指しており、ゆすはらキャンパスの取り組みは、そのための手段の一つに位置付けられています。交流人口とは定住以外の目的でその地域に訪れる人の数を指し、少子高齢化により定住人口の減少が避けられない中、交流人口を拡大させることで地域を維持・活性化させようという動きが中山間地域では広まりつつあるのです。

雲の上のリトルコリア 国際交流から生まれた特産品と新名所

初瀬区には、韓国の学生との交流から生まれた名物「鷹取キムチ」があります。平成14年に県内在住の韓国の方や大学教授を招いて作り方を学び商品化された、超本格派の自信作です。町内だけでなく県内資本のスーパーマーケットでも販売、大手食品製造会社とタイアップして商品研究を行うなど、今も進化を続けています。

鷹取キムチ

チムジルバンレストラン鷹取外観

チムジルバンレストラン鷹取外観

韓国の学生との交流は、韓国の大学助教授が「日本の地方自治と社会文化の研究」調査団として来町したことをきっかけに始まりました。日韓学生の交流の場として平成9年に「雲の上のゆすはら国際スクール」を開校。平成26年3月には「特定非営利活動法人はつせ」を設立し、韓国式サウナと韓国料理レストランを併設した「チムジルバンレストラン鷹取」をオープンしました。今では地元の女性約10人が従事し、雇用の創出、特産品づくり、観光施設の3つの機能を持つ地域の拠点となっています。

町内の川でアメゴの掴み取りを体験するゆすっことみやっこ

町内の川でアメゴの掴み取りを体験するゆすっことみやっこ

ゆすっこみやっこ

梼原町とその友好交流都市兵庫県西宮市では、通称ゆすっこみやっこと呼ばれる児童の交流事業が平成4年から行われています。夏休みを利用して両市町の小学5年生が相互に訪問し、交流する事業です。大阪と神戸のちょうど中間に位置し、その両方のベッドタウンでもある西宮市は、人口48万人を超える中核市。正反対の環境で暮らす小学生同士の交流を通して、それぞれの場所の良さや違い、そこで生活する友だちとの共通点など様々なことに気付き、彼らの今後の人生観を大きく広げてくれる体験となっていることでしょう。

行ったっきり!?フィールドワーク

成果発表後に四万川の皆さんと

成果発表後に四万川の皆さんと 左:制作したステートメント、右:インタビューの様

左:制作したステートメント、右:インタビューの様

8月になると、四万川区はいつにもまして活気を帯びるような気がします。東京からやってきた学生達が約3週間もの間、四万川区を拠点にインターンシップを行っているのです。廃校になった小学校に寝泊まりし、移動手段は主に自転車。教員が帯同するのは最初と最後だけで、後は学生たち自らの力で生活からフィールドワーク調査までの全てをこなさなくてはなりません。まさに、日本の果てまで行ったっきりのインターンシップ!
今年度は、コピーライティングゼミの5人の学生がやってきました。テーマは「四万川区の人と場所を繋ぐマップ制作」と「四万川区のコピーライティング」。連日地区内を自転車で駆け回り、延べ15人もの地域のキーマンにインタビューをして、活動最終日の報告会には手書きの巨大なマップと、それにリンクしたインタビュー記事、コピーをパネルにまとめたステートメントの3つの制作物を完成させていました。
「作業量が多くせっかくの梼原を満喫するひまがない!」と嘆いていましたが、毎日地域で活動する私達でも知らないような話しをたくさん聞けて羨ましい限りです。
実際に来て活動してみてどうかを尋ねると「始めは生活するだけで精いっぱいだったけど、慣れてしまえば全然やっていけます!」とたくましい答えが返ってきました。
 活動に関しての実感は「こっちに来るまではインタビューも文字おこしの作業もほとんどやったことがなかった。でも、このインターンでは会ったこともない方にいきなりアポを取ってインタビューのお願いをするところから全て自分たちでやらなきゃいけない。しかも数をこなしたので、そういう力と度胸はついたなと思います。」とのことです。
インタビューという一つの手段を通して地域のたくさんの方と繋がり学ぶことで、本来の目的であるコピーライティングの技術が身についただけでなく、数々の驚きと発見があったことでしょう。むしろその経験の方が実社会で生かされるかも…?しれません。

町内全域を学びの場に

夏祭りでは学生達も盆踊りの輪に参加

夏祭りでは学生達も盆踊りの輪に参加

梼原を訪れた学生達が沢山の気付きや学びを得るのと同時に、彼らとの関わりを通してこの町で暮らす私達が学ぶことも、きっとあるでしょう。互いに互いから学ぶことができれば、「キャンパス」としてこんなに素敵なことはありません。「キャンパス」というネーミングらしく、内外問わず沢山の人が学び、町が一つの研究機関のようになっていけば面白いですね。

(文:ゆすはら応援隊 西山 璃美)