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25歳農業女子、生まれ育った町に生きること。

島根・津和野

地域協働, 就農, 農林水産業マーケティング

わたしはこの津和野町で生まれ、この町で育ちました。家は祖父母がメロンやぶどう、野菜、米を栽培する少量多品目農業を営み、両親は別の仕事をしている、いわゆる兼業農家でした。

人を感動させるほどのおばあちゃんの野菜

  私が中学生の頃、あるとき祖母が作る野菜を食べてくださった方から葉書が届きました。
  「三宅さんの野菜とてもおいしいです。感動します。」
  私にとってはただのおばあちゃんが作った野菜が人を感動させているなんて。とても驚きました。私はそのことを作文に書いて「私もおばあちゃんのようにかっこよくなりたい。」と、学校で発表しました。このときは農業には少し興味を持っている程度でしたが、作文を聞いた友達には「農業すんの?ダサい…笑」と笑われました。恥ずかしい気持ちと悔しい気持ちでいっぱいでした。中学の時友達に言われたその言葉が、今でも頭から離れないのです。私は農業が笑われるようものじゃなくて、かっこいいものなんだと証明するためにも、農業をしていこうと決意しました。

農業の世界に飛び込むこと

  私は大学で農学を学び、他県での農業研修を経て実家に帰り、祖父母とともに農業をし始めました。農業の世界に飛び込んで以来、私が常に戦っているのは「劣等感」です。私と同い年の友達は会社に就職し、自分でしっかりと生計を立てて立派な社会人となっている中、私は一生懸命農業と向き合っているつもりでも「大学まで卒業してなんで農業なんかやってんだ」とバカにされたり、「農業してるなら暇でしょ」「ニートでしょ」などと、農業=職業として認めてもらえない時もあります。実際に農業をし始めて、改めて世間の農業へのイメージが冷ややかなものだと分かりました。私はさらに悔しさを募らせ、そしてますますやる気を出しています。

農業の世界に飛び込むこと

  今、私の生産物は道の駅や「まるごと津和野マルシェ」で販売しています。ただ袋詰めをしてバーコードを貼るだけでは面白くないので、自分でイラストを描いてラベルに貼ったり、売り場に自作のPOPを置いたりと、少しでも生産物の魅力が伝わるように工夫しています。それを見て手に取ってくださる方も多く、とてもやりがいがあります。商品を購入するのはほとんどが女性なので、買ってくれる女性の気持ちになって工夫できるのは農業女子の強みだと思います。

地域を見つめる農業者に

地域を見つめる農業者に

  生まれ育った町で農業をすれば、自然と町の皆さんが可愛がってくれます。商品をお店に並べる時に、「がんばっとるね~」「今日は何持ってきたん~?」と色んな人が声をかけてくれます。畑にいても、通りがかった近所の人たちが「休みながらしんさいよ~!」と気にかけてくれるし、『田んぼや畑のご近所さん』とは農業の話を語らいます。私よりずいぶん年上の先輩ばかりですが、学ぶことがたくさんあるのでありがたく、とても楽しく心地よい日々を過ごしています。しかし、この町にも過疎の波が押し寄せてきており、将来消滅するとも言われています。地域を考えると「農村形成」という社会的な役割を担っているのが農業です。最近は「私にもできることはある」と考え、自分の役割を意識し始めました。

・集落ソーシャルワーカーになる
  今の私の役割に名前をつけるなら『集落ソーシャルワーカー』だと思います。私が住んでいる集落は独居老人や老老介護家庭が多くなり、農地の管理はおろか日常生活も思うようにいかなくなっている住民もいます。私にとって集落の人たちは家族同然で、普段から積極的に声掛けをし、野菜のおすそ分けに行ったり、車に乗れないお年寄りの足代わりになったり、出会ったときは挨拶だけでなく世間話や体調を気づかう話をしたりと、少しでも寄り添えるように意識しています。人口減少、少子高齢化、耕作放棄地の増加が進む町で、さらに限界集落化待ったなしの我が集落では、私のような年齢層は重要な存在だと自覚しています。他人であっても自分からどんどん関わりを持ち、自分も農業を頑張ることで集落の人が希望を持てる日々がおくれればいいと思っています。

・農家ティーチャーになる
  縁あって、去年は小学生や中学生を農業見学に受け入れる機会をいただきました。元々大学時代に教職を学んで先生になる道も悩んだことがありましたが、もしいつか子どもたちに学びの場を提供するなら、私のフィールドは学校ではなく畑だと思いました。命あふれる畑には学校では出会えない教材がたくさんあり、また農業には先人たちの知恵や技が残っています。農業と教育は似ていると思います。水や栄養をあげてすくすくと成長するのを見守ったり、あえて厳しくして学ばせたり、時には優しくしたり。持っている能力や魅力を引き出し、発揮させる手助けをする仕事。今後も農業から教育と関わり、見つめていきたいと思います。

・地域を感じ、どっぷりつかる
  地域を考える上で是非おすすめしたいのが「お祭りに参加すること」です。津和野には伝統的な祭りが多くあります。しかしこれらは誰かが受け継いでいかなければ続きません。今まで毎年変わらずに守ってこられたのも地域の人たちの想いと努力の賜物なのです。そのバトンはこれからも脈々と受け継がれ、いつかは私たちが受け取らなければなりません。私はその準備、心構えをするためにも積極的に参加し、地域を知る必要があると思います。そもそも、第一に祭りに参加することはとても楽しい。そして、地域の一員なのだと心から感じる場でもあります。祭りに参加することで地域を肌で感じ、地域住民と対話することも必要です。

女性にしかできない農業で、農業のイメージを変える

女性にしかできない農業で、農業のイメージを変える

  最近では様々な分野で女性の活躍が目立っていますが、それは農業も同じです。全国的に「農業女子」と呼ばれる女性農業者の数はどんどん増えています。機械を扱ったり重いものを運んだりすることでは確かに男女差があるかもしれないけれど、決して農業は女性が出来ない仕事ではないし、女性が活躍できる場所は大いにあると思います。農家のおばあちゃんやお母ちゃん世代の多くは、若くして嫁に来てからずっと畑で汗を流してきています。男性の仕事に対して細やかな気配りをし、時には厳しい檄をとばし、農業だけでなく家庭も支えている。彼女たちを私はとてもかっこいいと思いますし、今でも輝いておられる方ばかりです。私は女性でも農業ができるということを証明し、女性にしか出来ない農業で世の中の農業のイメージをひっくり返したいと思います。

(文 : 三宅 智子)