子供から大人まで、ものづくりを通して人と人、人と地域をつなぐー市民のための実験的ものづくり工房ファブラボ関内
自分の手で自分のほしいものをつくる場所
「これはどうやってつくるんだっけ?」「ここをこうしたらいいんだよ」
幼い頃の工作の時間のように居合わせた人がお互いにやり方を教えあい、欲しいものを自分の手でつくるために集う場所。いろいろな年齢、職業、バックグラウンドをもった人々が集まり、ものづくりをする「ファブラボ」と呼ばれる市民工房があります。
私たちが幼いころ工作の時間につかっていたハサミやのり、カッター、半田ごてなど、手で使う道具に加え、ファブラボに揃っているのはデジタル工作機械。コンピュータでつくった3Dデータを設計図として立体物を作成する3Dプリンターや、光を集めて光線をつくり加熱することで材料に模様を掘ったり、切ったりすることができるレーザーカッター、イラストをデータで取り込み繊細な刺繍を施してくれる刺繍ミシンなどの多様な新しい道具が揃っています。
手作業によるアナログなものづくりからコンピュータをつかったデジタルなものづくり、またその掛け合わせによって「自分の手で自分のほしいものをつくる」ことを目指しています。
つくるものはさまざま ファブラボ関内
ファブラボは、いまや、世界50か国500箇所以上に広がっています。各地のファブラボではその国の文化やニーズに合ったものづくりが進められながら、世界中に散らばる各ラボがゆるやかにつながり、情報交換や人の交流が行われています。
横浜・関内に工房をかまえる「ファブラボ関内」は2013年8月にオープンした、日本で6番目のファブラボです。大学生や仕事を引退したシニアの方、電気メーカーのエンジニア、家具職人、デザイナーなど、さまざまなバックグラウンドを持つひとが集い、ものづくりを行っています。
いま、メンバーが力をいれて行っている3つのプロジェクトを紹介します。
①廃材アップサイクルプロジェクト
廃材をつかった家具づくりや日用品づくりワークショップの実施を通して、廃棄されたものや使わなくなったものの価値を高める活動をしています。
例えば、家具屋さんが日頃処分している端材をつかったオリジナルペンスタンドづくりのワークショップ。広島の家具メーカー「株式会社いまだ」とタッグを組み、”端材を生かす方法を考えよう”という趣旨でスタートしました。「株式会社いまだ」の広島工場から関内へ運ばれてくる材料は、ウォールナット、メープル、オークなど素材も形状もさまざま。家具をつくるための材料なので上質なものですが、通常ではそのまま捨てられてしまいます。ひとつひとつの形状を活かし、レーザーカッターをつかって自由に模様を掘ったり、アレンジを加えたりすることで、自分の用途に合ったオリジナリティのあるものを作ることができます。
②3Dプリンター義足プロジェクト
発展途上国の社会的弱者を支援するためのプロジェクトを進めています。3Dプリンターを義足作りに用いることで、通常よりも安価で一人ひとりの特徴に合わせた義足を簡単につくることが可能となります。義足を作るための柔らかい素材を出力する特別な3Dプリンターから、義足モデルをつくるための設計図ソフトまで、欲しいと思う義足をゼロからつくるために必要な工程をすべて開発しています。安価で、誰でも義足を簡単に作ることができる仕組みを関内から生み出し、世界に広げていこうという挑戦です。
③ファブボット”かんなちゃん”プロジェクト
「ファブボット”かんなちゃん”」は、電子工作初心者の人が簡単にロボットをつくることができる、ファブラボ関内のメンバーがつくったロボットキットです。プラスチックのカップに市販のマイクロコントローラ (ロボットの動きを制御する部品)と、3Dプリンターやレーザーカッターをつかって自分でつくったパーツを詰め込んで作り上げる、喋るロボットです。ロボットを一通り自分でつくってみることで、ファブラボにある機材がほぼ使いこなせるようになるようになります。
そのほか、刺繍ミシンをつかって刺繍を楽しむプロジェクトや、空き瓶をつかってライトをつくるプロジェクトなど、集まるメンバーの興味や関心に沿ったものづくりが日々、行われています。
地域にある課題を、“自分たちごと”として解決したい
ファブラボ関内は、「もっと地域の人に開かれた工房になりたい」と、2015年12月にリニューアルオープンしました。工房を自分たちの手でリノベーションし、作業スペースを拡張、オープン時間も週末の土日2日間限定から、平日も含めた365日24時間に延長しました。
平日昼間は仕事をリタイヤした人たちや子育て中の主婦が手を動かしながらおしゃべりを楽しむ場所として、午後から夕方は放課後の子供たちの遊び場、夕方から夜にかけては仕事帰りの人がふらっと立ち寄る場所として、土日はさまざまなワークショップの開催を通して、地域の人たちにより開かれた市民スペースになりたいと願っています。
今後も、地域に暮らす様々なひとが気軽に立ち寄り、地域や自分たちの身の回りの課題を持ち寄り、ものづくりを通してみんなで解決していく場となっていくことを目指し、さまざまなワークショップやイベントを開催していきます。ぜひ、気軽に遊びにきてみてくださいね。
文:ファブラボ関内 西村美香
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ものづくり×◯◯で地域をつなぐ工房。「温故創新」の文化を再構築したい