ローカルニッポン

“みんな”で遊ぶと、まちは元気になる!
~“今”の子どもも ”昔”の子どもも、枕瀬山に集まれ!!~


島根県津和野町の中でも、枕瀬地区は天文台やキャンプ場を有する「枕瀬山」や清流日本一の「高津川」といった豊かな自然の魅力にあふれています。先日、この地域で発足した「健康を守る会」が、『枕瀬山を楽しもう!クイズラリー大会』と題したイベントを開催しました。

「健康を守る会」と聞くとシニア世代を意識したと思いきや、「シニアはもちろんだけれど、子どもも親も若者も巻き込んで、幅広い年代が楽しめるイベントを企画しようと思った」と発案者の矢上さんは話します。今回は、イベントの参加を通じて体感した「多世代交流の仕掛け方」についてご紹介します。

会話が弾む、クイズの仕掛け

山登りとクイズラリーがセットになったこのイベント。当日の朝、約50人の参加者が集まりました。全世代が混じったチームを組み、枕瀬山のキャンプ場まで40分ほどかけて歩きながら、チームごとにクイズを解いていきます。

最初の問題は、モノクロの写真と「今はあるけれど、この当時なかったものはどれ?」というものでした。写真は50年以上前のその地域のもので、チーム内で当時を知る人が懐かしそうに思い出話をしながら答えを考えてくれます。おじいちゃん、おばあちゃんの「私が子供の時はね」「そうそう、うちの子が小さい時はね」という話は、昔を知らない世代にはとても新鮮で、自然とチーム内の会話が弾みます。「地域の写真」という共通の話題をつくるだけで、普段は話さない世代の人ともこんなにも交流を深めることができるのだと感じました。

キャンプ場を走り回る子どもたち

キャンプ場を走り回る子どもたち

キャンプ場に着くと、今度は子どもたちの出番です。残りのクイズはあちこちに隠されていて、すぐには見つけられません。元気に駆け回っては問題を発見し「こっちにもあったよ!答えがわからないから一緒にきて!」と同じチームの大人を引っ張って連れていきます。子どもたちの声かけによって、親以外の大人も積極的に問題を考える姿があちこちで見られました。

クイズで伝える、枕瀬山の魅力

クイズの中には『サバイバル問題』というものもあります。「火をおこすのに必要な組み合わせはどれか」というこの問題は、枕瀬山で活動をする地域おこし協力隊員の藤原さんからの出題です。彼女はキャンプ場や天文台といった魅力のある枕瀬山で、子ども達に「山で遊ぶ」ことを伝えるプログラムを計画しています。「山には子どもたちの考える力を育み、自然の中で生きる楽しさを伝えてくれる資源がたくさんあるので、それを活かす方法を見つけることが必要」と話します。

サバイバル問題に挑戦

サバイバル問題に挑戦

近年、枕瀬山の年間利用者数は200名程度にも落ち込み、地元の人にさえ利用されていない現状があるとのこと。それを考えると、今回のイベント参加者の約50名という利用者数は年間の4分の1に相当していることに!「そういえば最近山に来てなかった」という人は多く、「藤原さんの活動があることが嬉しい、応援したい」という声がいくつも聞こえてきました。自分の生活のすぐそばに何気なくある山が、子どもたちにとって貴重な学びの場になるということ。これがとても重要なことなのだと身を持って体験したことで、山に自分たちの誇りを感じたのだと思います。

「足が悪いから見学」・・・のはずが一緒に楽しんで大活躍!

クイズの後は、簡単なレクリエーションで身体を動かしました。線の上を進んで、相手チームと出会ったらじゃんけんをし、勝った方が進んで負けた方はスタート地点から別のメンバーが出発するというもの。先に相手の陣地までたどり着いたチームが勝ちというルールです。少しでも相手の陣地に近づけるように走る子どもを見て、足が悪いから自分は見学するよと話すおじいちゃん。ところが応援しているうちに、いつの間にかスタート地点に立って自ら参加していたのです!じゃんけんが強ければどんどん先に進めるこのゲームで、おじいちゃんはなんと5連勝!ついには相手の陣地までたどり着いてしまいました。

それぞれのペースで楽しめるレクリエーション

それぞれのペースで楽しめるレクリエーション

このおじいちゃんに限らず、初めは戸惑っていた大人たちもいつの間にかこのシンプルな遊びに夢中になっていました。単純なルールと軽い運動でできること以上に、チームで一緒に楽しめたことが参加者を引き込んでいきます。「健康のために運動しなくては」という思いからではなく、「楽しくて、いつの間にか運動してしまっている」ということは、健康を守る何よりの近道だと感じます。

笑顔があふれると、まちも元気になる!

あっという間に訪れた解散の時間。気づけば参加者には一体感が生まれていました。このイベントを開催した矢上さんは、「健康を守る会といって、おじいちゃん・おばあちゃんだけが集まるのではなく、子どもからシニアまで幅広い世代の人が集まって“一緒に楽しむ”ことが重要なのだ」と話していました。明確な意図をもって練られたイベントだったからこそ、どの世代の参加者にとっても心も体もとても健康的な時間となりました。こうした積み重ねこそが、まちを元気にしていくのだと感じさせられます。

地域活性のあり方はいくつもありますが、地域イベントでコミュニティに世代を超えた仲間意識を生むことも一つの方法だと思います。そして、それは主催者の思いと参加者への働きかけが最も重要であり、企画の仕方次第ではもっともっとまちを面白く・元気にする取り組みができるのだと、学ばせていただきました。

文:渡辺 未奈