ローカルニッポン

「学ぶ喜びを、地域の高校生に」~誰もが学ぶことを楽しめる社会を目指して~/Bridge School(ブリッジスクール)


Bridge Schoolは、分野、地域を問わない多様な大学生、大学院生、若手社会人によって組織された学生団体です。大学生が学問に打ち込む姿を示し、高校生に学ぶことの楽しさを伝えています。地方の高校生は、大学や大学生と交流する機会に乏しく、大学での学びをイメージしづらい環境にあります。進路選択にあたっては不安や悩みになると考え、地方出身の学生が中心となり、大学での学びの疑似体験を提供し、学ぶ楽しさや将来への活かし方を考えてもらうことを目的に、団体を立ち上げました。

2013年にメンバーの1人が、出身地である鳥取県で活動を始めました。鳥取県での活動に参加した南信州・飯田市出身で、代表を務める慶應義塾大学大学院2年の関口真司さんは、2014年に南信州へと活動を広げます。関口さんの呼びかけで、約30人いるメンバーのうち、3分の1近くが南信州出身です。

3日間の合宿で、高校生が「学ぶ喜び」の種を発見するサポート

Bridge Schoolは、学ぶ喜びを分かち合うことで、それぞれが自分の人生を楽しめるようになることを目標としています。

「特に高校まではある種、義務化された勉強をする中で『学ぶことは苦しいこと』というイメージが共有されているように感じます。ですが、新しい知識や経験に出会って自分自身を変えていく『学び』という営みは本来、喜びを伴うものだと考えています。そこで、高校生に『学ぶことは楽しい』と発見してもらい、そのうえで彼らが進路選択できるようになることを目指して活動しています。」

と、関口さんは話します。

Bridge School 代表 関口真司さん

Bridge School 代表 関口真司さん

活動は年に一度の合宿企画がメイン。およそ20名の大学生が同数の高校生を迎え、長野県の山奥で3日間の合宿を行います。「学問体験セミナー」では、Bridge Schoolのメンバーである大学生が講師となり、大学の講義を再現。高校生は興味のある専門分野について大学の講義を体験することができます。

社会人講師を交えたワークショップの様子

社会人講師を交えたワークショップの様子

高校生が自分の得意なことや熱中できることについて向き合うワークショップ、1日の終わりには大学生が高校生の相談に乗る座談会、社会との接点を作るセミナーでは、地域で活躍する社会人講師を招き、地域で生きるということ、働くことについて学ぶ講演を実施。これらの多彩なプログラムは、すべてBridge Schoolのメンバーが企画しています。

地元高校で初のワークショップを開催

当初は継続することを考えずに始めた活動でしたが、かつて高校生として参加した人が大学生となりBridge Schoolのメンバーに加わり、継続性が見えてきました。さらに最近では少しずつ活動の幅が広がり、関東では進学してからも悩みを抱える大学1・2年生を対象にしたワークショップを企画することもあります。同時に、地元での認知も広がってきました。

11月初旬、一般社団法人ウィルドアのコーディネートにより、長野県立飯田OIDE長姫高校商業科の1年生を対象に、丸1日ワークショップを開催。地域人教育の一環として、同校が依頼しました。同校では「地域を知る」を目的に、数年前から社会人講師を招くなどしています。

「高校生に足りないのは学ぶ姿勢です。学びがあっての地域人教育で、社会の課題を解決するために学び、広い視野を持ってほしいんです。地域を学び生きる姿勢を身に付け、勉強も同じ姿勢で取り組むようになれば、結果として学力向上につながると思っています。」

と担当教諭。今回、Bridge Schoolに依頼したのは「高校生にとっては一番身近な大人である、地元出身の大学生から学ぶ意義は大きい」との考えからでした。

高校生に語りかけるBridge Schoolメンバー

高校生に語りかけるBridge Schoolメンバー

高校生82名に対し、Bridge Schoolは運営スタッフ13名での実施。

「ワークショップの参加者が有志ではなかった点は苦労しました。学校の授業なので、ワークショップに参加すること自体に積極的ではない学生が多くいました。全員に同じだけの効果を届けることが難しく、どこにどのくらいこだわり、全体のために何を割り切るかという、これまでにない決断を迫られました。ですがその中でも、大学生の磨き抜いた個性や悩み抜く姿勢が、予想よりはるかに多数の高校生に変化のきっかけを提供できたと手応えを感じています。こういった機会をいただいた際に、運営スタッフとなる大学生や若手社会人を安定的に供給できる体制を作り、より学校内の授業に適したプログラムを充実させていくことが、今後の課題です。」

Bridge Schoolが設定したワークショップのテーマ。高校生はそれぞれ興味を持ったテーマを選んだ。

Bridge Schoolが設定したワークショップのテーマ。高校生はそれぞれ興味を持ったテーマを選んだ。

ふるさと「南信州」への想い

「いずれは地元に戻って働きたい」という関口さん。地元と離れている現時点で地元と関わり、地域の大人たちと接するきっかけになっているのがBridge Schoolです。

「地元の皆さんとの関係をより深めながら活動していきたいです。この3年間で活動が広がるチャンスをくださったのも、集客面や資金面での支援をしてくださったのも一番は地元の方々でした。そうした方々からいただいている期待に真摯に応えられる活動でありたいと思っています。そして、地域に暮らす高校生に身近に感じてもらえるようになり、今以上に大学や社会への橋渡しを行っていきたいと考えています。」

学生として最後の「Bridge School in信州」開催

関口さんは現在、修士論文作成の真っただ中ですが、2017年3月には、年に一度の合宿「Bridge School in 信州」の開催が待っています。学生として関われる最後の企画に「全力を尽くして良いものを作り上げていきたい」と意欲に燃えています。

【Bridge School in信州】
日程:2017年3月10日(金)~12日(日)
会場:国立信州高遠青少年自然の家(長野県伊那市)
参加費:1万円(食事・宿泊・送迎・教材費等)

Bridge School in信州 開催情報・申し込み
http://bridgeschool.jp/register

文:久保田 淳子