ローカルニッポン

“身体に優しい手作りケーキ”と、“「スキ!!」だけを厳選したコーヒー”から深まる、移住者たちの地域への愛着


梼原町、太郎川公園の一角にあるふるさと市場。長らく空き店舗となり、閑散としていた5つの店舗スペースが、今はすべて埋まっています。そのうち2店舗は、移住者たちがそれぞれの想いをカタチにしたお店を経営。

ある移住者は「身体に優しく、安心・安全な食べ物を届けたい」という想いを抱いて手作りケーキのお店を。そしてある移住者は、ご夫婦2人の「スキ!!」だけを厳選したコーヒースタンドをオープンしました。それぞれの想いが、地域へ溶け込むきっかけとなり、地域への愛着をも深めていっているように感じます。そんな移住者の想いと地域との関わりについてご紹介します。

梼原移住のきっかけは、「呼吸ができる!!」という実感。

移住者の知世さんは、大病を患ったことで健康に対する考え方が変わり、身体にいいもの、身体に優しいものを求めるようになったそう。治療が終わって梼原に来たとき、のどの病気だった知世さんは、「呼吸ができる!!」と実感しました。当時住んでいた場所に対して、「今私がいるのは、ここじゃない。梼原でくらそう!」そう思い立ち、すぐに梼原へ。

安心・安全な食べ物を食べてもらいたいから、原材料を厳選。

大病を機にいっそう食べ物の安心・安全に気を配るようになった知世さん。彼女のお店「Cloud Bread」では、素材にこだわったアイスクリームや知世さん手作りのケーキが並びます。アイスクリームは、着色料や添加物、安定剤などは極力使わず、天然のものにこだわっています。手作りケーキについては小麦粉不使用のグルテンフリーケーキと小麦粉・砂糖不使用のローカーボ(低糖質)ケーキが週替わりで並びます。

地域とコラボ。地域の野菜×身体に優しい食べ物を届けたいという想いをカタチに。

「梼原の水・空気で育った野菜を使いたい!」。そう考えた知世さんは、農家さんとお話をする中で、梼原にも少し形が悪くて規格外品になる野菜があることを知ります。「梼原の水・空気で育った野菜は、パワーフード。形が悪くても、安心・安全で新鮮な野菜だから、是非ケーキの材料に使いたい。せっかくだから、梼原らしい野菜を使いたい!」。そこでまず選んだのが「あまとうがらし」。あまとうがらしは唐辛子の一種ですが、辛みや苦みは少なめ。試作を重ね、あまとうがらしの素材そのもののおいしさを活かしたカップケーキが誕生しました。地域の野菜を使って、身体に優しいものを届けたいという想いがカタチになった瞬間です。

梼原で採れたあまとうがらし。カップケーキの断面にはあまとうがらしのキレイな緑色が。

梼原で採れたあまとうがらし。カップケーキの断面にはあまとうがらしのキレイな緑色が。

「今は自分のお店を中心にケーキを販売していますが、ゆくゆくは梼原のこども園や学校給食で、おやつとして食べてもらいたい。」と話す知世さん。子どもたちに、梼原の野菜の素晴らしさを知ってもらいたいし、「美味しい」と思って食べてもらいたい。そんな想いを込めて、地域のパワーフード(梼原の野菜!)を使った身体に優しい美味しいものを作ろうと試作を続けています。

コーヒースタンドをオープンしたきっかけは、奥様のスキ!!

移住者の光さんは、「緑と水の豊かな山間部に住みたい」との想いで梼原へ。梼原に移住するにあたって、仕事はどうするか、を考えました。光さんは、「どこかに勤めるつもりはないから、自分で飲食店をしたいなぁ」とイメージしていたそう。コーヒースタンドを始めよう!と思ったきっかけは、奥様がコーヒー好きというシンプルな理由でした。

奥様とご主人の2人ともが「スキ!!」なものだけを提供

光さんのお店「COFFEE STAND CANs Hutte」で扱っているのは、奥様とご主人の2人が「美味しい」、「スキ!!」と思ったものだけ。コーヒーはもちろん、焼き菓子、輸入菓子等が並びます。「流行を追うのではなく、自分たちの「スキ!!」な味をアンテナに持っていたい」、とおっしゃる光さん。ご夫婦で福岡や東京など遠方にも出向き、スペシャルティコーヒーなどを扱う多くの焙煎所の豆を飲み比べながら、コーヒー豆を選定します。四万十の天然湧水で丁寧にハンドドリップされたコーヒーは、2人の「スキ!!」がいっぱい込められています。「奥様が焼き菓子をつくるのがスキだから」マフィンがお店に並びます

四万十の天然湧水でハンドドリップしたコーヒーと奥様手作りのマフィン

四万十の天然湧水でハンドドリップしたコーヒーと奥様手作りのマフィン

お店がきっかけで深まった、地域の方々とのつながり

ご夫婦のスキ!!がいっぱい詰まったコーヒースタンドのお客様は、地域の方々が半分、遠方からの観光のお客様が半分。遠方からのリピーターさんも徐々に増え始めています。お店では、お客様とお話をすることも多いそうで、「地域の方々が多くお店に来てくれて、いろんな話が出来て親交が深まる。お店を始めて一番良かったなぁと思うところです。」と光さんはいいます。お店を始めてから、お米や野菜を頂くようになったり、色々と助けてもらえたり。お店があったからこそつながった人もいて、人とのつながりをより強く感じるようになりました。近頃では、地域の方々と話すうちにお弁当のリクエストを受けるようにも。地域の方々の要望を反映したカフェ風のおしゃれなランチボックス、キーマカレーやガパオライスの販売も始まっています。

今回ご紹介したお二人の移住者。地域との関わり方はそれぞれですが、お二人が共通で想われていたことがあります。それは、「これからもここ梼原で、生活していきたい。この暮らしをこれからも長く続けていきたい。」

地域の野菜を使った、美味しくて身体に優しい食べ物をつくる知世さん、「スキ!!」を追及しながら地域のリクエストに応えていく光さん。これからも、それぞれの想いを大切にしつつ、これからも「この暮らし」を長く続けていってほしいと思います。

文:ゆすはら応援隊 内城 裕希