ローカルニッポン

全国のキッズタウンの草分け~地域愛を育むテーマパーク「南信州お仕事キッズタウン」/一般社団法人 飯田青年会議所

南信州・飯田市下伊那郡14市町村エリアで活動する、一般社団法人 飯田青年会議所(古田嘉仁理事長)は、56年の歴史を持ち、明るい豊かな社会の実現に向け、日々まちづくりに取り組んでいます。これまで飯田青年会議所は、誰もが知る地域になくてはならない事業の数々の立ち上げに関わってきました。ここ数年では、飯田青年会議所が考案した小学生対象の「南信州お仕事キッズタウン」が、新たにまちを代表するイベントの一つに定着しつつあります。

大人と子どもがふれあう「職場体験」からテーマパーク「キッズタウン」へ

飯田青年会議所は例年、事業の柱として、今年で第36回を数えたわんぱく相撲大会などの青少年育成事業を長年にわたり行ってきました。現在の「南信州お仕事キッズタウン」の発端は、地域の“大人と子どものふれあい”を目的とした、2009年の事業「まちのお仕事体験」でした。日頃、家庭や学校でしか大人と接する機会のない子どもたちに、お仕事体験を通じて、地域の大人たちとふれあってもらおうという企画。テーマを変えながら、2011年まで職場体験という形で実施しました。

その後、一度により多くの子どもたちに、複数の仕事を体験してもらいたいと、飯田市との共催で、2012年に「南信州お仕事キッズタウン」と名称を変え、一会場に企業を集めて子どもたちに来場してもらう、テーマパーク的な今のスタイルが始まりました。消防士、美容師、銀行員…。さまざまな地域の仕事が体験できるとあり、保護者も含めて来場者は1日で1271名。反響の大きさから、継続へと進んでいくことになります。

人気体験の一つ、美容師のお仕事体験

まちの仕事を通して地域愛へとつなげる

2013年からは、地域愛を育むことがこのキッズタウンの大きな目的として、強く打ち出されていきました。当地域は4年制大学がなく、高校卒業後に若者が地域外に出て行く割合が高い地域です。子どものうちに故郷の魅力を知り、地域外に出てもそれを語れるようになってほしいとの願いから、まちの仕事を通して地域への関心を高め、地域愛へつなげる場と位置づけていきます。

日程や会場など、試行錯誤を重ねながらも開催を続け、参加数は年々増加。昨年2015年は来場者数1600人を超え、参加企業は51社にのぼりました。今年で5年目を迎えますが、全国的に見て職場体験で行っている地域はあるものの、この規模でテーマパーク的に開催している地域は他にはなく、全国のキッズタウンの草分け的存在となりました。

屋内、屋外をフル活用。施設が丸ごとテーマパークに変身


2016年度担当の青少年ふれあい委員会、梶川剛委員長は

「飯田青年会議所が始めた企画ですが、思っていた以上に地域に広がりました。趣旨に共感し、飯田青年会議所メンバー以外の協力者が増えていき、まだまだ大きくなる可能性を秘めています」

と語ります。

ポスターを手に今年のキッズタウン開催をPR
する梶川委員長

参加企業として、実行委員として、小学生の母として

ここまで続けるには、実行委員会「南信州えがおプロジェクト」に参加する学生や飯田青年会議所OB、一般市民の存在がありました。これだけ大規模の事業を運営するには、飯田青年会議所以外の協力が不可欠です。

実行委員の一人で、参加企業であり、小学生の子どもを持つ、グラフィックデザイナーの平島裕子さんにお話を伺いました。

「飯田青年会議所メンバーに声をかけていただき、参加しました。地元企業や子どもたちと交流できる良い機会だと思いましたし、新しいことに挑戦して、自分を成長させたいという気持ちもありました」

「名刺作りのお仕事」を小学生に教える
平島裕子さん(右)

2014年に参加し「キッズタウンの魅力を知ったと同時に、反省点、改善点も多々あると感じました。一般参加者や参加企業としての立場で感じた声を届けて、より良いキッズタウンを作るお手伝いができたら」と、2015年からは実行委員としても主体的に関わるようになりました。ポスターやチラシの作成も担当しています。

「飯田青年会議所の皆さんや他の参加企業のキッズタウンにかける想いを知り、当日参加するだけでは分からなかった苦労や達成感を一緒に感じることができました」と、昨年を振り返ります。

会議では一般市民も積極的に発言を行い、
活発な議論がなされる

自身の小学生のお子さんの参加については

「その道の専門家に教えてもらいながら体験するお仕事は、学校の授業では得られないものがあったようです。仕事をしてお給料のキッズタウンマネー(仮想通貨)をもらい、自分で稼いだお金で買い物をするということも嬉しく楽しいようでした。また行きたい!と言っています」

子どもたちにとって年に一度の待ち遠しい日になることを願って

これからのキッズタウンについて平島さんは

「就職を考える年令になった時に『こんな職業に就きたいけど、キッズタウンであんな企業があったな』『あの人に相談してみようかな』と、思い出してもらえるような人と人のつながりができたら嬉しいです。このまちには、楽しくてかっこいい仕事をする魅力的な大人がいっぱいいる、都会に行かなくても輝ける場所がこの地域にあるんだということを子どもたちに知ってほしい。子どもたちにとって、キッズタウンが年に一度の待ち遠しい日になれば」

と、願いを込めます。

飯田青年会議所メンバーによる弁護士体験
「模擬裁判」

地域みんなのキッズタウン~すべては、まちの子どもたちの未来のために

「待っていてくれる子どもたちがいます。長い間、青少年事業をやってきた飯田青年会議所として、子どもや地域の期待を裏切ることはできません。何よりも子どものたちのために、この事業を地域全体に広げていきたいんです」

と梶川委員長。地域みんなのものにしたい、すそのを広げていきたいと、実行委員会「南信州えがおプロジェクト」は、一般の団体への移行を視野に検討を始めています。継続していくための予算の確保など、課題はありますが「いずれはキッズタウンに参加することが企業にとってのステータスとなるレベルを目指したい」と、現状に満足することなく、今年の開催を9月11日に控え、夢は大きく膨らみます。すべては、まちの子どもたちの未来のために。

文:一般社団法人 飯田青年会議所 久保田 淳子