ローカルニッポン

「鴨川里山トラスト」次のステップへ向けて 前編

書き手:根岸 功(KUJIKA)
千葉県南房総市在住。編集者、ライター。南房総の里海・里山の自然、つながる人々の豊かさに、胃袋ともども感謝する日々。目下、小規模有機オリーブ栽培に奮闘中。サーファー。2 児の父。

無印良品が、千葉県の鴨川エリアに関わりはじめて6年目となりました。地域の人々とつながっていく中で、「本当に持続可能な都市と地域の関係は?」「そこにいる人々が地域について考えるきっかけはなんだろう」といったたくさんの疑問もうまれました。

その答えを探るべく、より深く、より多角的に、里山での暮らしや文化と、一般のお客様のニーズとを繋げられるようにと願いを込め前進していきます。

改めて、これまでの取り組みの成果や課題、そして目指す未来を、里山トラストを共催するNPO法人うず理事長・林良樹さんに伺いながらおさらいしていきます。
前編は、トラストの始まりから、現行の前身「鴨川棚田トラスト」の活動までを振り返ります。

可能性を秘めたトラストの共催

現在の「鴨川里山トラスト」は、2014年から始まった鴨川棚田トラストが礎になっています。当初は、林さんが草の根で都市農村交流をしながら、近隣の棚田の保全活動を行なっていましたが、その後、縁あって協力関係が始まりました。

毎年、GW後から梅雨前にかけて行われる田植え。ここの棚田は天水だけで水をまかなう。

毎年、GW後から梅雨前にかけて行われる田植え。ここの棚田は天水だけで水をまかなう。

「僕はここ、鴨川・釜沼北集落に20年ほど住んでいて、10年くらい前から村の長老たちと棚田オーナー制度を運営し、NPO活動の一環として都市農村交流を企画しながら、この棚田の保全活動を行なっています。“日本の農村の豊かさと、その一方でいま起こっているさまざまな問題を、都市部の人々にも知ってもらう良いきっかけになれたら”。元々そういう思いもあって都市農村交流を続けていましたが、無名のNPOがひとりで声を挙げても届く範囲は狭い。それ以来、企業や大学、自治体のみなさんと連携していきたいという考えに変化しました。そんな時に目にしたのが“くらしの良品研究所”のウェブページでした。そこには暮らしやローカルなど、共感できる視点が数多くあったことに親和性を感じ、ご縁がうまれました。」(林さん)

子供たちは田植えに飽きると泥んこ遊び。いつまでも残したい風景。

子供たちは田植えに飽きると泥んこ遊び。いつまでも残したい風景。

その頃の無印良品をみてみるとローカルに目が向き始めた時期で、地域を担当する部署の前身が生まれたり、活動として運営されていた「くらしの良品研究所」が組織として成り立ったりと、ちょうど進むべき方向性がシンクロしたタイミングでもあったようです。

田植えから注連縄飾りまで~「鴨川棚田トラスト」が始動

梅雨が明け、稲がぐんぐん育つ初夏の棚田。生命力があふれ出す。

梅雨が明け、稲がぐんぐん育つ初夏の棚田。生命力があふれ出す。

このような流れから、2014年春より、林さんが暮らす鴨川・釜沼北集落の棚田で鴨川棚田トラストの活動が始まりました。これまでの活動は、くらしの良品研究所サイト内のブログ「千葉・鴨川―里山といういのちの彫刻―」(https://www.muji.net/lab/blog/kamogawa/)にて、紹介されています。

棚田トラストでは、募集で集まってくださった一般のお客様と無印良品のスタッフが月に一度集まって、田植えから草取り、稲刈り、収穫祭、そして注連縄飾りをつくるワークショップまでを一年を通して行います。現場での指導と集客や運営を林さんと分担し、協働での都市農村交流の形態を目指しました。そして、棚田でお米をつくり続けることは、日本の里山の美しい景色を次世代に繋ぐことにもつながります。

収穫前の黄金色に輝く稲穂。日本の豊かさがここに。

収穫前の黄金色に輝く稲穂。日本の豊かさがここに。

「こういう活動は、ひと昔前までは環境や社会活動に関心があるような一部の人々だけしか来ませんでした。そういう意味では、無印良品が発信することでご家族連れから若い女性、大学生まで、“ちょっと関心があるから”とか、“ちょっと行ってみたいから”など、気軽なものとして入口の裾野がとても広がった気がします。レジャーでも遊びでもいいので、まずは現地に来て、見て、交わって、現実を知ってもらうことが重要です。いま、鴨川はもとより日本全国規模で数え切れないほどのトラスト活動が実施されていると思いますが、大きな視点を持って、多種多様なバックグラウンドを持つ人たちがハードルなしに集える環境をつくれればと願っています。僕は“多様性”という言葉をすごく大事なキーワードとして捉えています。ですので、このトラスト活動をより多くの人たちから「いいね!」といっていただけるようにしていきたいです。」(林さん)

棚田トラスト参加者たちとの稲刈り。自然に感謝する満たされる時間。

棚田トラスト参加者たちとの稲刈り。自然に感謝する満たされる時間。

前編は、トラストの始まりから、現行の前身「鴨川棚田トラスト」の活動までを振り返りました。後編では、棚田トラストが「鴨川里山トラスト」にスケールアップした背景と、これからの活動についてお伝えします。

文・根岸 功(KUJIKA) 写真・hirono、中村将一

<鴨川里山トラスト2019年度 年間スケジュール>
2019年
5月18日(土)田植え
6月8日(土)草取り&お箸づくり
7月13日(土)草取り&すがい縄づくり
9月7日(土)稲刈り
10月12日(土)収穫祭
12月21日(土)しめ縄飾り&みかん狩り
2020年
2月15日(土)味噌仕込み

林さんからのメッセージ
今年も鴨川里山トラストが始まります。
里山とは、水と空気と大地と森が豊かな生態系を育み、農林水産業の基礎となり、食や暮らしを守り、街を支え、社会の健康を保っている大切な場です。
そこは、日本人が1千年の時をかけて創り上げてきた人と自然の調和した「時間と空間」であり、日本人の美意識が込められた「いのちの彫刻」だと思っています。
アメリカ先住民のことわざ”大地は先祖から受け継いだものではなく、子孫からの借り物である”とあるように、引き続き私たちの宝物である里山をみなさまと共に保全し、未来へ手渡していきたいと願っています。

今年から申し込み方法が変わり、受付は「NPO法人うず」になりました。お申し込みは、下記よりお願いいたします。
みなさまのお越しを心よりお待ちしております。

*無印良品 鴨川里山トラスト2019 「第1回 田植え」
*お問い合わせ:awanoniji@gmail.com/080−5087−3280(NPO法人うず 林良樹)