ローカルニッポン

シラハマ校舎の過ごし方 ~ワーケーション、フリーランス編~

書き手:多田佳世子
安房郡(現・南房総市)白浜町出身。東京―白浜の二拠点&別居婚生活を経て、2013年に白浜へUターン、夫と同居を始める。母校である長尾小学校を利活用し、2016年よりファミリー・ビジネスでシラハマ校舎を運営している。

シラハマ校舎を拠点にしてデュアルライフを送るメンバーは「無印良品の小屋」の利用者だけではありません。学校時代の旧教室を利用した10部屋のシェアオフィスはここ2年間満員御礼、サーフショップやアトリエ、治療院など様々な業態の事業者が入居していますが、みなさんに共通するのは仕事+αがあること。今回は最後の空室に入居したフリーランスのエンジニア・山田直樹さんにお話を伺いました。

シラハマ校舎との出会い

都内のレコーディングスタジオにて。仕事は日付を跨ぐことも

都内のレコーディングスタジオにて。仕事は日付を跨ぐことも

東京を中心にフリーのレコーディング・エンジニアとして活躍する山田直樹さん。CDやDVD作品の収録曲をミックスするのがメインの仕事で、作品が仕上がるまでは、一日のうち14時間ほどを音楽スタジオで過ごします。その分、休日になれば愛車のアバルト595に乗って遠出をし、アウトドアスポーツやサーキットの走行会で思いっきり羽を伸ばしてリフレッシュしています。

中でも房総方面には、なじみのシーカヤック&サップスクール「パドルスポーツ・ルー」があり、オーナーの高橋夫妻とは10年来のお付き合い。シラハマ校舎との出会いも2017年にお店のメンバーみんなで遊びに来たのがきっかけでした。

その年の秋、今度はアバルト車のパーツブランド「Three hundred」が主催する房総ツーリングの企画に携わることになり、立ち寄りスポットを選定するために再度来店。翌年2月にツーリングが開催されると、レストラン兼休憩所として利用したシラハマ校舎をますます気に入り、それから幾度となく訪れるようになりました。やがてここのシェアオフィス事業を知り、一室だけ空いていた元教室に一目惚れ。夏が来る前に入居を決めたのです。

理想の部屋を描いて

「はじめてみた時に『ここだ!』と思いました」という山田さん。まだ誰も入居していないオフィスの一室は、廃校時点から全く手を加えられていない状態。2.7メートルの高い天井に白ペンキの壁、33㎡のフローリングワンルーム。教室というよりは、ヨーロッパのアパルトマンを思わせるたたずまい。そして南側一面に広がる窓辺に立てば、新緑のプラタナスに続いて3000坪の校庭、その先には真っ青な水平線が浮かんでいました。

隣室の「たなごころ治療院 肉質研究所」の内装にも刺激され、理想の部屋作りがスタート。年季の入った壁や天井が醸す雰囲気を壊さぬよう、使い込まれた家具を探したり、神戸の実家からアンティークや思い出の品を持ち込んだりして、適度に簡素で温かみのあるアトリエができあがりました。

黒板とカヤックが並ぶシラハマ校舎のオフィス

黒板とカヤックが並ぶシラハマ校舎のオフィス

シラハマ校舎ではたらく

「ワーク」と「バケーション」から作られた造語である「ワーケーション」。ワーケーションといえば、会社の事務や制作作業などリモートでもできる業務を旅先に持ち込むイメージですが、山田さんの場合はだいぶ違います。デジタル化が進んだ現在、エンジニアの仕事もラップトップ一台でほぼ完結するそうですが、海辺の開放的な暮らしは集中力を要するエンジニアリングには向かなかったようです。ここで出来ることといえば、フリーランスにまつわる事務作業や次のスタジオ作業に向けての充電程度。そこで都内の仕事を白浜に持ち込むことはせず、シラハマ校舎ではレストランの事業を手伝う方向にシフトしました。

学生時代も含めて飲食業界はほとんど未経験だったものの、レストランで働くことには昔から興味があり、外食で訪れたお店では、厨房やホールの動線、カウンターの内側などに見入ってしまうほどでした。緊張しながらも30年ぶりに履歴書を書いて、シラハマ校舎のレストラン「バルデルマル」の求人に応募。採用されてすぐのゴールデンウィークから働き始め、もうすぐ2年が経とうとしています。近頃では「無印良品の小屋」の一部メンバーも山田さんの影響を受け、会社とは違う仕事をがしたいと皿洗いやウェイターを志願する人たちが出てきました。

焙煎したコーヒー豆を風に当て、シルバースキンと呼ばれる薄皮を飛ばす作業

焙煎したコーヒー豆を風に当て、シルバースキンと呼ばれる薄皮を飛ばす作業

シラハマ校舎であそぶ

山田さんのバケーションはアクアラインを渡り千葉県に入ったところから始まります。最短距離を行くなら高速館山道ですが、風光明媚な海岸線やアップダウンのある里山の一般道こそ景勝ルート。山田さんは木更津の先、君津のインターチェンジで高速道路を降 り、国道88号線で千葉県の真ん中を南へ下ります。カーブの多い峠道では最適なラインを描き、安全かつ無駄のない走行を意識しています。もはやドライブというより、サーキットを走るための練習といったところでしょうか。

シラハマ校舎に着いて荷物を置いたら、近くの山や海へ向かいます。山田さんの趣味のひとつであるシーカヤックは4月から11月頃までがオンシーズン。磯に恵まれた房総の海には、カヤックだからこそ辿り着けるポイントがたくさんあります。スキルアップのための練習をしたり、ランチやシュノーケルセットを持参して一日がかりでツーリングに出かけたりと、様々なコースメニューがあります。

週末を白浜で過ごし、都内の自宅へ戻るのは日曜の夜。帰り道の峠でシカやサル、イノシシと遭遇するのも山田さんの楽しみの一つなんだとか。都心部と南房総を結ぶルートは大体100km 前後ありますが、毎回の移動をどう捉えるかが二拠点生活継続のカギになるのかもしれません。

サップでのクルージングも楽しい房総の海

サップでのクルージングも楽しい房総の海

仲間と始めた新しい趣味

では、海に入らない冬場のオフタイムは何をしているのでしょうか。今、シラハマ校舎でブームになっているのが流木集め。今年の1月は暖冬の影響もあり、おのおのが海岸を散歩したり砂遊びに出かけていました。やがて二拠点メンバーが時間を合わせてビーチコーミングをし、流木を拾い集めるのが週末の光景となりました。

カフェやショップのインテリアとして重宝される流木ですが、実際に集め始めると色や触感など、各自の好みが面白いように分かれてきます。大きさによって用途も異なり、ここから先は個人のセンスとアレンジ力が試されます。

山田さんの場合、はじめは大きなものを集めてオブジェにし、さらに石畳や海砂を運び入れて、初めての庭造りにチャレンジしました。外構が一段落した今は、小ぶりな流木を使ったインテリア小物造りに挑戦中。ヤスリを使って流木を研磨する作業は、気が付くと夜中まで続いていることもあります。

流木の溝やくぼみにエアプランツを挿した山田さんの作品海

流木の溝やくぼみにエアプランツを挿した山田さんの作品

二拠点生活は配偶者の理解のもとに

ところで山田さんが二拠点生活を始めてからしばらくの間、みんなからはずっと独身だと思われていたようです。月の半分~3分の1を単身で白浜に来て過ごしているので、無理もありません。しかし実際は結婚して20年。お互い経済的に自立し、安定した関係にあるからこそ、奥様の理解が得られているのかもしれません。

インテリア雑貨のバイヤーを務める奥様も、昨年の春頃から休みが合えばシラハマ校舎を訪れるようになりました。来る3月は恒例のイベント「シラハママーケット」に夫婦で出店予定。山田さんのシェアオフィスをショップとして開放し、雑貨のサンプル品や試作品を格安で放出します。雑貨狙いの方も、山田夫妻の二拠点生活のお話を聞きたい方も、気軽に遊びに来てくださいね。

利用メンバー:1~2人
利用頻度:週に1~3日
白浜での過ごし方:流木集め、ドライブ、カヤック
シラハマ校舎での過ごし方:レストランのアルバイト、流木磨き、DIY
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