ローカルニッポン

シラハマ校舎の小屋暮らしvol.7 ~共働きリモートワークと子育てと~

昨年は新しい生活様式に戸惑いつつも、足並みを揃えようと努力した1年でした。学校生活は感染対策でがらりと変わり、大人社会ではテレワークが推奨され、可能な職種から在宅勤務に切り替えを開始。しかし通勤の負担が無くなると、今度は仕事部屋の確保や昼食の用意などがネックになり、次第にワークスペースを自宅の外に求める人が増えていきました。こうした背景の下、我が南房総はリモートワーク&リゾート地として名乗りを上げ、既にワーケーションが定着しているシラハマ校舎にも入居待ちが殺到、特に30~40代の子育て世代からは多くのお問合せを頂きました。

そこで今回は、実際にシラハマ校舎で子育てとリモートワークを行っている安田さん一家に生活の様子を聞いてみることにしました。

二拠点生活のきっかけ

シラハマ校舎に小屋を持つ安田夫妻は長女・翼ちゃんとの3人暮らし。夫の達一郎さんは兵庫県出身、妻の有希子さんは横浜育ちですが、お母さんの実家が富津市にあったことから、子供時代は夏休みを房総で過ごし、ジャンボプールやマザー牧場といったレジャースポットにも幾度となく足を運んでいたそうです。やがて年月が過ぎ、結婚して、翼ちゃんが生まれ、大好きだったおばあちゃんが90半ばで亡くなると、家族でお墓参りを兼ねて房総半島をドライブするようになりました。

そしてちょうどその頃、学生時代の友人が南房総に引っ越したことを知り、四半世紀ぶりにシラハマ校舎のレストラン「バルデルマル」で再会することに。これをきっかけに安田家の白浜通いが始まり、やがて2拠点生活や「無印良品の小屋」に関心を持つようになりました。ある日、いつものようにシラハマ校舎のウェブサイトを見ていると、小屋の賃貸情報を発見。いきなり不動産を購入することに不安もあったため、これ幸いとお試しで入居してみることにしました。

賃貸物件入居当時。キャンプの延長のような感覚でした

二拠点生活スケジュール

こうして安田家の二拠点生活は始まりました。初めは週末旅行の感覚で、土曜日の午前中に都内の自宅を出て、小屋に一泊して日曜の夕方に帰宅というパターン。やがて東京での予定がない週末は、金曜の夜に出発して、その日のうちに白浜入り。2泊できると更にゆったりした過ごし方ができます。そして日曜の夜は、他の小屋ファミリーに倣って、お風呂、夕食、歯磨きまでをシラハマ校舎で済ませ、翼ちゃんはパジャマのまま後部座席でぐっすり眠って帰宅。金曜日のうちに白浜に来るのは少し慌ただしい感じがしますが、そこは旅行ではなく二拠点生活。やりかけの仕事も家事も車に詰め込み、小学生以上になると宿題やマンガを自分のリュックに詰めてやってきます。未就学児がいる家庭であれば、保育園から持ち帰る布団カバーや上靴など、白浜で洗って干して持ち帰る人もいます。

夕方に山に登り、そのままお風呂へ。夕飯までがスムーズに進みます

リモートワーク

共働きの安田夫妻ではありますが、やはり平日の家事・育児は有希子さんの負担が多く、週末に仕事を持ち越すこともあるそうです。そのためシラハマ校舎では、達一郎さんが食事を作り、翼ちゃんと一緒に遊んでいる姿をよく見かけます。その間、有希子さんはシラハマ校舎の中のコワーキングスペース「アワセルブズ」に移動して仕事に集中します。安田家に限らず、両親のどちらかがワーキングスペースで仕事をすることは多いのですが、小屋からは一線引かれたオフィスと映るのか、ママを求めて窓から覗いたり、声をかけたりということはありません。子供というものはこうして社会性を身に着けていくのかもしれませんね。

一方、達一郎さんは平日に1人で小屋を訪れ、リモートワークを行うこともあります。この時は小屋で深夜まで作業し、一泊して東京に帰ります。このような使い方を始めたきっかけは在宅勤務での運動不足。都内の自宅で仕事をする日はほとんど歩かないそうですが、小屋に滞在している限りは、食事やトイレの度に外に出ることになりますし、ちょっとした散歩やサイクリングも可能。今年に入り、週末は家族で、平日は1人で来て仕事をして帰るというパパたちがちらほら出てきました。また一つ小屋の新しい使い方が生まれたようです。

コワーキングスペースで仕事をする有希子さん

小屋での子育て

親が仕事をするためにはどちらかが子供を世話する必要がありますが、シラハマ校舎の中ではやや事情が異なります。マンツーマン育児というのは滅多になく、よその子もまとめて面倒を見るか、よその親が自分の子と一緒に見ているか。子供同士で勝手に遊んでいることもあり、仲たがいもしょっちゅうですが、5分と経たずにくっついているのが面白い。

外遊びはパパたちの定番。みんなまとめてお世話します

シラハマ校舎は海に近く、山あり、川あり自然豊か。子供を自然に触れさせたいというのはどこの親も思うことですが、都会っ子を1人で野に放っても、伸び伸び走り回ってはくれません。しかし仲間ができれば、木登りや飛び込みなど、次から次へと新しいことにチャレンジしていくようです。

母親の有希子さんによれば、平日の翼ちゃんは朝から晩まで保育園で過ごしており、家では一人っ子、従兄弟姉妹は1人もいないため、「4歳だとこれくらいかな?」と親が考えたもので遊びがち。でもシラハマ校舎では学年のばらついた子供たちと一緒に過ごしていて、登山やサイクリング、ボードゲームなど少し背伸びした体験を重ねています。そんな中「一番小さいから」と優しくしてもらえたかと思えば、遊びについていけず置いてきぼりを喰ったり、口喧嘩で言い返せずに大泣きしたり。傍から見るとドラマティックな展開も多々ありますが、ご両親はそんな体験もよい刺激になり、翼ちゃんを大きく成長させていると考えているようです。

ですから3000坪の敷地の中に行き来できるお友だちの小屋がいくつもあるという環境はとてもありがたいとのこと。それと同時に、常に大人の目があり、安全な場所であることも重要。シラハマ校舎は一見開放的ですが、小屋の建っている敷地は石垣と生垣で仕切りがあり、関係者以外は立入禁止。どこの小屋の子供か、親は誰なのか、お互いに知っているからこそ子供を自由に遊ばせられるのが長屋風小屋コミュニティの大前提なのです。

賃貸から購入へ

週末を小屋で過ごすメンバーと顔なじみになり、子供同士もよく遊んでいる、リモートワークもできることがわかったタイミングで、今度は敷地内の別の小屋が売り出されることを知り、安田夫妻はすぐに購入を決めました。引っ越し後は早速庭いじり。まずは、小屋の縁側から2.5メートル先までの芝生を剥がし、防草シートを敷いてウッドデッキを設置。屋根に金具をつけてタープを広げると、晴れた日はここがリビングルームに変身します。続いて物置。台風の影響が強い地域なので、これは専門業者に依頼し、水平器で平行をとってからコンクリートで基礎を作り、しっかりと固定してもらいました。次はレンガを並べてカマド作り。みなさん最初はバーベキューセットを使いますが、次第に組み立てや洗い物が面倒になり、レンガを並べて簡易かまどに移行します。カマドであれば火が広がることもなく、磨き洗いをするのは網だけなので、片付けも簡単にすみます。そして今年に入って始めたのは花壇と畑作り。裸足で遊べる天然の芝生を残しつつ、生垣沿いだけを掘り起こして細長細い家庭菜園の出来上がり。1年目の春は、パクチーやニンジン、マリーゴールドなどを植え付けました。

庭仕事はクラブハウスを聞きながら

今後やりたいこと

安田家は自分たちの庭造りが一段落しても、土に触れる余力がまだまだあります。翼ちゃんにも、大好きなトマトやミカンを自分で育てる体験をさせたいという思いがあり、これからはシラハマ校舎の菜園教育「エディブルシラハマ校舎プロジェクト」に参加することで “農ある暮らし” を体現していく予定です。

またシラハマ校舎の目的のひとつである地域を交えたコミュニティづくりについては、二拠点生活者の立場で地域に貢献できる方法を模索中。達一郎さんは放送局に勤務し、これまで映像・デジタルコンテンツの制作に関わってきました。副業には至らずども、ワークショップ等を通して制作技術を伝えたり、房総からの情報発信や地元の子供たちのキャリアデザインに一役変えたら…ということを考えているそうです。

利用メンバー:3人
利用頻度:月に6~9日
庭の利用方法:ウッドデッキ、カマド、菜園
シラハマ校舎での過ごし方:リモートワーク、外遊び、畑仕事
近隣のおすすめスポット:里見の湯